Experience 宿泊体感型
アートツーリズム

ならやま凮土譚とは

永遠に言語化できないことを
思わずこえにした軌跡が詩であるなら、

“あはひ”
ということばそのものが
一篇のみじかい詩なのだろう。

万象の重なりをあなたはどう眼差し、
何と語り継ぐのだろう。

「ならやま凮土譚」とは、
民話や伝承の主人公が異郷を訪問するように、参加者が土地へ迷い込み、物語を共創する、
新たな宿泊体感型アートツーリズムであり、現代の異郷訪問譚です。

現実社会のしがらみを手放し、物語の主人公である“旅人”として、童心に還って異郷を見聞していただきます。


ヤマとヒト、天と地、過去と未来、あなたとわたし、言葉とことばの、“あはひ”。
“あはひ” とは、モノやコトの間(あいだ)という意味であり、分断でも融合でもない、互いが浸透しあった重なり合いの部分でもあります。

「ならやま凮土譚」の旅で訪れるこの地は、虚構と現実の“あはひ”にあります。

「神隠しにあった」「現代の山伏修行のようだった」
「過去か未来かわからない時空にタイムスリップした」
「こどもの頃の自分と再会した気がする」「壮大な広場で遊び場だった」・・・

どのように語り継ぐかは、あなた次第です。

ご参加に際し
「ならやま凮土譚」の一頁を共に生き、共に創りあげるみなさまへ、
いくつかお願いごとがございます。

「ならやま凮土譚」の主人公である”旅人”=お客様は、
以下のようなキャラクター設定となっております。
「ならやま凮土譚」の世界観と合わせてご確認くださいませ。

作品参加上のご留意点
(あはひの世界での約束ごと)

□あはひの世界のなかでは、外部との接続を断つことで、日常の役割から離れご参加いただきたく思っております。
携帯電話等の通信機器は、原則使用せずお過ごしください。
SNS発信なども同様に、参加中はご遠慮ください。
体験濃度を高めるため、PC等電子機器とも、参加の間は距離をおいてみてください。

□時計など、時間がわかるものは使用しないことをおすすめします。
”あはひ”の世界の時間と、お客様が日常使っている時間は概念が違います。
時計よりも土地の人の合図が重要ですので、ご留意ください。

□電子通信機器を使用しない代わりに、旅の記憶を記録するのための、紙とペンとフィルムカメラお渡しします。体験中、ときめいた風景などの記録にご使用ください。
大切な誰かや、次ぐ日の自分へ、届けたいことや思い起こしたいことをのこしていただければ幸いです。その軌跡もまた、いつかといまをつなぐ「ならやま凮土譚」の一頁となります。

□「ならやま凮土譚」の世界では、言葉だけに頼らない対話をすることが推奨されています。
そしてお客様の日常の世界と同じように、誰かを傷つけたり、自分を傷つけたり、土地で生きるものや道具を傷つけることはタブーとされています。

年に数度、季節とともにひらかれる、まぼろしの旅。
申し込み時から帰路に着いた先まで、現実との境目がわからなくなる、あなたと紡ぐものがたり。
詩的世界観のフィルターを通して、過去・現在・未来の多層的な土地の記憶を、全身でご体感ください。

楢山集落とは

或るひとが、
「集落全体がひとつの惑星のようだ」
と呟く。

或るひとは、
「理想郷じゃなくて桃源郷なの」
と微笑む。

見知らぬ原風景。なつかしい異郷。

この地は、あなたの人生に
どんなことばで刻まれるのか。

楢山集落は、福島県耶麻郡西会津町の北の辺境の奥川郷にある、たった2件の小さな集落です。
1660年に開拓され、360年続くこの集落は、地元でも秘境と呼ばれる豪雪地で、山々を見下ろす眺めは絶景。雲海を眼下に望むこともあります。

開拓以降、稲作を中心に、炭焼きや養蚕、林業など、百姓(=100の仕事ができる民)の暮らしによって棲み継がれてきましたが、現在は、その19代目でランドスケープアーキテクトでもある矢部佳宏が継承しています。
矢部は、かつての里山集落が、持続可能な自然と人間のエネルギー循環システムになっていたことに感銘を受け、まるで一つの「惑星」のようだとして、未来へ学びを得るために様々なアーティストやクリエイターとの共創を続けています。

2019年より「楢山プラネタリーヴィレッジプロジェクト」=惑星のような楢山集落を立ち上げ、その第一段階として古民家ホテル事業 NIPPONIA楢山集落 を開業しました。
新しい風土性、地球課題とアート、土地の記憶とDNA、詠み人知らずのデザインをコンセプトワードに、その風景を継承・革新していく集落を目指しています。

宿泊施設について

三つの舎に、燈がともる。

ひとの掌に培われたそのイエは、
杜の懐に抱かれるような
樹や土の気配に満ちている。

呼吸を想い出すひとときに
この場所を、棲家とするのはどうだろう。

みなさまがお泊まりになるのは、
築130年の蔵と小屋を改修した古民家ホテル NIPPONIA楢山集落 です。
お部屋は、集落を取り囲む山や沢の名を冠した“高陽” “聖”“十五夜” の三部屋がございます。
一部屋に、最大3名様までご宿泊いただけます。

各部屋の特徴

聖−HIJIRI−

築130年、土壁の風情が建物の歴史を彷彿とさせる農のための「小屋」をリノベーションしたお部屋です。
聖-HIJIRI- の名前は、かつて楢山集落が属していたお隣の出戸集落にある「ヒジリ沢」が由来です。その出戸集落には岩屋虚空蔵尊という岩窟のお堂があり、かつて山伏が修行したであろう岩窟のイメージを継承し、「籠る」ような部屋のデザインとなっています。和室には壁の下をくぐると見えるアート作品などの仕掛けもございます。

【禁煙】2階建メゾネット型 59.5平米
1階 寝室(洋室、セミダブルベッド2台)+寝室(和室6畳、お布団1組)・トイレ
2階 ダイニングルーム(キッチン・調理器具・冷蔵庫等あり)・洗面所・風呂

十五夜−MITSUKINO−

築130年、土壁の風情が建物の歴史を彷彿とさせる農のための「小屋」をリノベーションしたお部屋です。
十五夜-MITSUKINO-の由来は、楢山集落の背後にそびえる高陽山の中腹を流れる「十五夜沢(ミツキノサワ)」。満月=ミツキに十五夜の漢字を宛てた風流な沢の名前に感銘を受け、このお部屋の名前に採用いたしました。なお、かつての楢山集落は、集落内に湧き出ずる清水を飲み水に用いておりましたが、現在では十五夜沢から取水した水(簡易水道)を飲み水に使用しております。

【禁煙】2階建メゾネット型 64平米
1階:リビングダイニングルーム(キッチン・調理器具・冷蔵庫等あり)・トイレ
2階:洗面所・風呂・寝室(セミダブルベッド 3台)

高陽-KAYA-

外は分厚い土壁、内は板壁に覆われ、太い梁や曲線を描く梁に支えられた築130年と伝えられる蔵。かつては山村の暮らしの根幹を成す保存食:味噌や醤油、漬物や米などが保存され、長持や漆器などの家財も保管されていました。高陽-KAYA-は、この蔵を宿泊施設としてリノベーションした一棟貸しのお部屋です。
高陽-KAYA-の名前の由来は、楢山集落の背後にそびえる守り神である山、「高陽山(カヤサン)」。最近ではコウヨウサンと呼ばれるようになり、かつての呼び名を知る人がほとんどいなくたっため、過去の記憶を未来へとつなぎたいという願いを込めて名付けました。

【禁煙】2階建メゾネット型 64平米
1階:リビングダイニングルーム・洗面所・風呂・トイレ
2階:寝室(和洋室・セミダブルベッド3台・お布団1組)

※ 宿泊のお部屋は、ご指定頂けません。当日のご案内となります。

各部屋にご用意があるもの

□タオル・寝間着など
浴衣・羽織・下駄・バスタオル・フェイスタオル・ボディタオル・室内ばき
□ボディケア
シャンプー・コンディショナー・ボディソープ・ハンドウオッシュ
□アメニティグッズ
歯ブラシ・綿棒・コットンメッシュボディタオル・シャワーキャップ
□什器・備品
食器類・ 2ドア式冷凍冷蔵庫・湯沸かしポット・ドライヤー・ウォシュレット・暖冷房器具
□ならやま凮土譚特別室礼
ミニバー・本棚・西会津米糠洗顔石鹸・アート作品 他

注意事項

・室内は禁煙です。喫煙は建物外の所定の場所でお願いいたします。
・施設周辺は山に囲まれており、土、泥や雪などに汚れる場合があります。服装・お履物にご注意ください。
・同敷地内には集落の住民・虫・動物・植物が通常の暮らしを営んでおります。互いの暮らしを尊重し合うようお願い申し上げます。
・私どものホテルは歴史的建造物の保存を目的として当時の趣や風情を出来るだけ残して再生している施設のため、機能的に通常のホテルとは異なる部分がありますことをあらかじめご了承願います。

食事について

血肉の底からの「おいしい」は
「いとおしい」とひどく似ていた。

殺した分だけどう生かせるか、
祈るように問いながら。

次ぐ日へいのちを継ぐために
今日もぼくらは、
食事という儀式をはじめる。

「ならやま凮土譚」の2泊3日の旅のなかでは、合計5回のお食事の時間を用意しております。
それら全てが、「風景を食べる」「美味しさとは何かを再認識する」「いのちをいただく」ことを感じさせるような、参加型のアクティビティです。

ここでしか味わえない、まさに“体感型”の飲食体験をご用意しております。

お召し上がりいただくのは、化学調味料などは一切使用せず、
日本ならではの発酵食品の旨味や素材の甘みを生かした滋味深い料理の数々。
地元の素材を中心に季節に合わせ開発された、特別メニューをお楽しみください。

こだわりの食材

楢山産のお米とお味噌
滞在中お召し上がりいただく米は、楢山集落の耕作放棄地となった田を復活・再生し、
NIOPPONIA 楢山集落 スタッフの手で育て収穫したものです。
西会津米は、日本トップクラスの食味値を誇り、冷めても美味しさを損なわないのが特徴です。
その米を麹にしたものから、町内のお味噌屋さんで無添加で作られた楢山味噌も、併せてご賞味ください。

地のもの・旬もの
山の恵みや旬の野菜は、地元西会津で採れたてのものや、旬の時季に大切に加工して保存したものを使用しています。
信頼できる作り手さんによって、できるだけ昔ながらの方法で自然に寄り添いながらつくられた厳選素材をお愉しみください。

注意事項

・アレルギー等のご事情で食べられない食材については、お申し込み時のアンケートに必ずご記載ください。
・季節や仕入れの状況により、お食事の内容が変わります。
・季節により、屋外でのお食事も含まれることがございます。
・室内でのお食事の際は、スタッフがお部屋にお持ちし、ご準備のお手伝いをさせて頂きます。
・お食事等のご用意のため、食卓の上に置かれている私物等を動かす場合がございます。あらかじめご了承願います。

<料理人  佐藤千裕> <料理人  佐藤千裕>

アート・文化

“すべての田園と生活を
ひとつの巨きな芸術に”

かつての詩人が語った教えを
風の匂いに想い出す。

五感で読み解き
細胞で思考して

新たなマツリの芽生えを
この瞬間に、ご一緒しよう。

「ならやま凮土譚」では、土着の文化(年中行事や民俗文化)が、
様々な表現媒体を使ったアートパフォーマンスで“感じる”コンテンツに変換して表現されます。
毎回、参加するアーティストやアートパフォーマンスは異なります。
当季当座の、サイトスペシフィックな作品をご体感ください。

これらの体験は、引き継がれてきたもの(消えつつあるもの)と、現代のアーティストとのコラボレーションでもあります。
これまでにも、楢山集落では、土地の記憶と素材を生かしたアート作品が、宿泊施設の家具などとして実際に使われています。

土地の記憶を深くリサーチして表現するアーティスト(マレビト)は、
失われつつある里山の営みを現代に変換し未来へ繋ぐ“語り部”でもあります。

この場所にあるからこそ価値のあるモノやコトをより多く生み出していくことで、
「ならやま凮土譚」での時間を特別なものとし、
その体感を更に、旅人(マレビト)であるみなさまに語り継いでいただくことで、
ものがたりが紡がれていきます。

※ パフォーマンス等の詳細はひみつです。ご参加いただいた方とだけの体験となります。
※ 季節ごとに屋外での観覧もございます。

楢山集落でのコラボレーション作品例

美術家で出ヶ原紙職人でもある滝澤徹也氏とコラボレーションし、襖作品や絵画作品などを製作。素材には、優れた教師であった楢山集落の先人の蔵書、古い藁細工などを使用しました。それらを周辺地域にて採取した楮に混ぜ込み、集落内にある山の神様(祠)が見守る池の水で漉いたものです。古民家の屋根裏の煤や、キラキラと雲母の混じった池の砂、楮を組み合わせ、池の波形を使って紙を漉き、集落から眺める山波や雲海の景色を生み出し、土地の記憶を繋ぐサイトスペシフィックな作品が誕生しました。

出ヶ原紙
西会津の出ヶ原地区を中心に広く生産されていた和紙の総称であり、特に会津藩の御用紙として古くから漉かれていました。「出ヶ原」の名自体が紙の代名詞になるほど知られた純楮紙です。大判、中判、小判がありこのうち大判が藩の御用紙出ヶ原杉原。中判、小判の地紙を含み出ヶ原紙といわれます。出ヶ原の名は昔、伊豆の国から来たものが紙漉きを教えたことに由来しているといわれています。
現在、出ヶ原紙の伝統を引き継ぐ滝澤氏は、一度完全に途切れてしまった伝統を再生復活しました。
野生の楮を手刈りし、蒸し、すべ取り、叩き、漉き、干すなどの工程を手で行っています。全ての工程を未だに手で行っている、数少ない和紙工房です。

<美術家  滝澤 徹也> <美術家  滝澤 徹也>

料金について

失われゆく、あたりまえだった風景。
いとなみに、永く培われてきた風景。

社会と地球をつなぐヒントを
サトとヤマはしっているのかもしれない。

未来から想い出す価値を
共に耕してゆけるだろうか。

このプロジェクトでは、場所の力を引き出す演劇的表現手法により、かつてどこにでもあったような集落全体の佇まいや、里山風景が持つ価値への視点を共有し、語り継ぐことを目的としています。

2泊3日一部屋 1〜3名:30万円(税込) *冬季50万円(税込)
上記は1部屋ごとの価格です。
1名のご参加でも、3名様でのご参加でも、価格は変わりません。ご注意ください。

料金には以下の内容が含まれます。

・ウェルカムドリンク
・宿泊費 2泊3日
・お食事・ドリンク 5食分
・アートパフォーマンス他各種文化体験
・送迎(最寄り交通機関まで、冬季は郡山駅まで)
・お土産

このプロジェクトの収益は、以下の事柄に活用されます。

・収益による雇用者は集落環境および里山の整備を行います。
・収益が高まれば、耕作放棄となった水田などの再整備に取り組みます。
・里山文化に対して多様で複層的な視点をもつアーティストとともに、土地の記憶をリサーチし、その過程や成果を集落と作品へ相互に還元します。
・上記取り組みの一環として、将来的にアーティストが中長期滞在しより深く里山環境と関わりながら作品の創作を行える、新たなレジデンスシステムを作ります。

これらの取り組みはすべて、故くて新しい集落システムのを構築してゆくための試みです。

Q&A

  • 楢山集落は実在するのでしょうか?

    実在します。福島県耶麻郡西会津町奥川高陽根字百目貫5900番地です。

  • 集合場所は楢山集落ですか?

    旅のはじまる地点は、毎回異なります。お申し込みの際に、集合場所のご案内を差し上げます。基本的には、楢山集落よりもアクセスがしやすい場所での集合を予定しております。

  • 物語の途中でリタイアすることは可能でしょうか?

    しないことを強くお勧めします。

  • 2泊3日の体感型アートツーリズムとは、どういった意味合いですか?

    『アートパフォーマンスや演劇作品のようであり、山岳修行のようでもあり、民俗文化の継承活動でもあり、もしくは体験型観光でもあるかもしれません。かつて何百年も繰り返されてきた農村集落での暮らしのように、手間のかかった一期一会の体験です。』(代表挨拶より抜粋)